第120章 私に嘘をつくな

杉浦杏奈は午後の撮影現場には向かわず、そのまま杉浦グループへ直行した。

灰原仁司に半ば強引に連れられ、途中でショッピングモールに寄って服まで着替えさせられたものの――。

鏡に映る自分を見て、杏奈はなんとも言えない顔になる。

ハイネックのTシャツに、長ズボン。

……灰原仁司のセンス、正直どうなんだろう。

そのせいで、というべきか。

あまりにも「普通すぎる」格好だったせいで、会社に着いても受付係は彼女が誰なのか気づかなかった。

「お約束はございますか」

「父に会うのに、予約が必要なの?」

「お父様って、どなたのことですか」

うんざりしたように顔を上げた受付係は、杉浦杏奈の口元...

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